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今求められる、組織活性化のために人事部門に必要な「マーケティング視点」とは


※本記事は「日本の人事部」に掲載されているHRカンファレンス2021の講演レポートです。

HRテクノロジーの導入は、マーケティング視点に着目して取り組めば業務効率化だけでなく、会社全体の組織活性化にもつなげることができる。HRテクノロジーを活用したクラウドサービスを提供するHiTTOの五十嵐智博氏が社内向けに特化した「チャットボット」の概要とそれが生み出す効果について語った。

目次[非表示]

  1. 1.社内向けAIチャットボットの導入を契機に人事業務が大きく効率化
  2. 2.センシティブな質問もちょっと聞きたい質問も簡単に聞ける
  3. 3.情報のやり取りの活性化が、組織の活性化につながる
  4. 4.導入企業から集まる情報や経験が蓄積され、自動でメンテナンス


社内向けAIチャットボットの導入を契機に人事業務が大きく効率化

HiTTOは2006年に設立され、IoTやロボティクスなどさまざまな事業を展開してきたベンチャー企業だ。現在は社内向けAIチャットボット「HiTTO」の開発から販売、サポートまでを行っている。

チャットボットとは、チャットとロボットを合わせた造語であり、インターネット上でのテキストによるリアルタイムのコミュミケーションを自動的に行うプログラムだ。ECサイトやサポートセンターなどBtoCのビジネス領域における活用が進んでいるが、「HiTTO」は社内向け(BtoE)に特化していることが特長だ。例えば、有給休暇の残り日数や勤怠状況の確認、住所変更や年末調整の手続き方法など、従業員が知りたい情報をチャットボットに質問すると、即時に回答が表示される。

「HiTTO」は、日本の人事部「HRアワード2021」に入賞。AIを搭載したチャットボット市場の中でも高いシェアを占め、利用者数は30万人超、継続率は99.5%という。大手企業の導入が多く、顧客の8割が従業員数1000名以上という状況だが、ここ1、2年は中小企業からの問い合わせも増えている。規模や業界を超えたニーズの広がりは、社内業務の効率化や働く環境の整備に対する企業の意識の高まりの表れではないかと、五十嵐氏は分析している。

「人事部における社内コミュニケーションに関する課題は看過できません。従業員から電話やメール、対面を通じてさまざまな質問が連日寄せられているのではないでしょうか。もちろん、従業員の不明点や質問に対応するのは人事部にとって大事な仕事ですが、似たような問い合わせに何度も答えているケースも多いかもしれません。

質問する従業員を待たせることはできませんから、人事部として取り組んでいる仕事を中断して優先させるしかない。それが残業の原因にもなるわけです。一つの問い合わせへの対応に時間はかからないとしても、ちりも積もれば山となってしまう。同じような質問が繰り返し入ってくると『この対応は本当に必要なのか』という疑問が生じかねません。人事部員の生産性低下はもちろんですが、モチベーションの低下にもつながると考えられます。本来やるべき仕事や新しいチャレンジに時間を使うことが困難になるのは明らかです」

五十嵐氏によれば、このような状況を改善すべく、「従業員がイキイキと働けるように、中長期目線で組織の活性化に取り組みたい」と考えて、「HiTTO」を導入する人事部門が増えているという。人事部門の視点から、社内向けマーケティングを考えたとき、その目的は「会社理解の促進」と「自己解決できるアクションの促進」といえる。

いわゆる、ナレッジマネジメントとインナーブランディングだ。社内向けマーケティングの対象は従業員であり、対象に届ける情報は主に二つ。一つは制度や申請に関するオペレーションや手続き関連の情報。もう一つは、取り組みや理念、CSR、研修、福利厚生制度など会社自体の情報だ。その目的達成に向けて、適切なタイミングで従業員がさまざまな情報にアクセスできる環境の整備が欠かせない。こうした実践は組織の活性化やオープンな社風、個人やチームの行動変容、エンゲージメント向上にもつながっていくと考えられる。


センシティブな質問もちょっと聞きたい質問も簡単に聞ける

次に五十嵐氏は、ある大手リース企業のチャットボット導入事例を紹介した。勤怠、出張、各種証明書、健康診断、社会保険、社宅、給与など、幅広い人事領域の回答ができるチャットボットを公開したところ、月に500件ほど従業員から問い合わせが入るようになったという。さらに年末調整の時期には1週間で2000件もの問い合わせにチャットボットが自動応答した。

「この企業で導入を始めてみると、ある傾向が明らかになりました。チャットボット導入以前は、給与、賞与、手当などのお金や評価といったセンシティブな問い合わせは少なかったそうです。ところが、導入後はこうした問い合わせが多く届いた。人事に電話をしたり、メールを送ったりしてまで、問い合わせるのには気がひけるような質問もチャットボットになら気軽にできるというわけです。この傾向は他の導入企業においても見られています。従業員にとって聞きにくい、話しにくい、といったコミュニケーションのハードルを下げる効果があることがわかります」

それ以外に、チャットボットに多く寄せられるのは、妊娠や出産、育児、介護といったライフイベントに関する質問だ。ライフイベント系の制度は新設してもなかなか浸透していかないケースは少なくない。

そこで、ある医薬系メーカーでは、産休・育休などの社内制度の活用を促進するため、従業員が必要と感じる時に必要な情報を素早く入手できるようにしたいと、チャットボットを導入した。すると、「ちょっと聞いてみたい」「どうなっているのか気になる」といった疑問がスピーディーに解決されるようになり、社内制度の認知促進、利用率の改善に結びついた。

「昨今は男性の育休に関する質問も多いですね。問い合わせ内容を基に、新たに男性従業員向けにオンラインの説明会を開催したり、日々のコミュニケーションの取り方に活かしたりといった事例もあります。また、従業員が知りたいテーマを軸に紹介動画を作成して、社内ポータルサイトに加える、新しい情報コンテンツを設ける、社内制度の説明会のプログラムの参考にするといった取り組みにつながったお話も聞きます。従業員がチャットボットに問いかける内容には、業務改善のヒントがたくさん隠されているのです」

チャットボット導入の際には、企業ごとに、動物などをモチーフにしたキャラクターを設定していることが多いという。名前もつけてアイコンとしての認知を促す狙いがあるからだ。また、イラストを何パターンか用意し、回答内容に応じた喜怒哀楽の表情を持つキャラクターに切り替えて表示することも可能だ。

ゆるキャラのような親しみやすい雰囲気は、従業員にも親近感を与えやすい。「それなら○○ちゃんに聞けばいいよ」「○○ちゃんから教えてもらった」と、従業員同士の会話の中にキャラクターの名前が出てくるまでに定着していくという。


情報のやり取りの活性化が、組織の活性化につながる

五十嵐氏は、チャットボットには業務の非効率を解消するメリットもあるという。

「大手企業の場合、人事部門の中にも給与担当、勤怠担当などのように担当が細分化されています。そのため、担当者が会議や休憩中で不在の場合には、従業員からの質問に答えられなかったり、回答を探すのに時間がかかったりするといった事態が起こりがちです。こういった非効率を回避できる点もチャットボットのメリットといえます。人事部門のメンバー間での情報の確認や共有にも役立ちます。

中小企業では兼務や兼任者が多いために、『人事部門の○○さんがいなければ業務がまったく回らない』『誰も知らないため○○さんに聞くしかない』といった事態が起こりがちです。このような環境においてもチャットボットは有効です」

人事部門の属人化が進めば、ジョブローテーションの推進にも影響が及んでしまう。ある流通大手では、チャットボットの導入によって人事部門に寄せられる質問に対する担当者による回答のばらつきや遅延の解消という効果も得られた。テクノロジーを活用して情報の整理整頓を進めると、従業員への情報伝達と理解が早まり、従業員に時間的心理的なゆとりも生まれたため、ジョブローテーションも進み、組織の活性化につながっている。

「ある建設コンサルタントでは、以前から働き方改革の推進の一環でテレワークを進めていたものの、なかなか利用されない課題を抱えていました。社内での説明会や社内ポータルサイトの掲示板からの発信にも効果がなかった。そこで、チャットボットを導入し、『対象者の条件は』『利用回数の上限は』『誰に申請したらいいか』と、テレワークに関して従業員が気になるポイントを細かく分けて、コンパクトに自動回答の内容にまとめました。するとテレワーク制度の啓発活動が一気に加速して効果があがったそうです。

この会社では、キャラクターを広報室の方がオリジナルで描き、季節によって衣装が変わったり、回答できないときに思わずクスッと笑ってしまうような『すみません』と泣き崩れる姿に変わったりと、従業員を楽しませる工夫もされています。『文字だらけのマニュアルを読むよりも頭に入りやすい』と従業員にも好評と聞いています」

説明会の場で伝えた内容は、全て従業員にインプットされるわけではなく、参加した時点で情報に興味がなければ記憶には残らない。情報は、受信側が欲するタイミングに発信しなければ効果が薄らいでしまう。ポータルサイトの情報もの同様で、いくら内容を充実させても「欲しい情報を探すのが面倒」「カテゴリーが多くて情報にたどり着きにくい」と考える人には閲覧されない。アクセスしやすいような整頓がなされていなければ、情報はキャッチされにくくなってしまう。こうした情報の停滞を解消させる手立てが組織の活動推進には欠かせない。

「既存のFAQや検索システムなどにアクセスしても使いにくさを感じてしまうと、『聞いた方が早い』と諦めて、電話やメールに手が動いてしまうものです。チャットボットの場合は、具体的な質問には適格な回答が返ってきますし、抽象的で曖昧な質問にはどんどん絞り込んで回答を探して提示してくれます。人に話しかけるのと同じようにテンポよく聞けるため、『聞いた方が早い』という感覚で利用できるのです。気軽に使えると、従業員に浸透しやすく組織全体へのなじみもいいと思います」


導入企業から集まる情報や経験が蓄積され、自動でメンテナンス

導入企業の従業員アンケートによれば、電話やメールよりもチャットボットの方が便利と答える従業員が8割を超えるという。「業務時間外や休日でも使える」「本社と店舗での営業時間の違いや時差出勤を気にせずに済む」といった時間を気にせず質問できる点に利便性を感じる声が一番多い。また、「些細なことでも気軽に質問しやすくなった」という声の詳細について従業員にヒアリングしたところ、「敷居が高くて人事には聞きにくい」「忙しそうなので質問するのは申し訳ない」「こんな質問をするのは恥ずかしい」といった心理的障壁が解消されたことがわかった。

それ以外にも、若年層に多い「電話やメールでのコミュニケーションがあまり得意ではない」、リモートワークが進んだため「以前のように隣の席の人にちょっとした質問ができない」、新入社員や中途入社者にありがちな「誰に何を聞いたらいいのかわからない」といった心理にもチャットボットは応えられている、と五十嵐氏は語る。

「チャットボットは、人事部門でも導入から運営、管理まで簡単に行えます。HiTTOは人事・総務・経理・法務に関する質問パターンを100万件以上あらかじめ学習した共通AIを搭載しているため、FAQデータ、シナリオ作成などの導入準備は必要ありません。また、自動的にメンテナンスされ回答精度が保たれていくので、ITに不慣れな方や兼任者にも無理なく運用・管理ができます。HiTTOでは、チャットボットの活用促進のためのコンサルティングや社内マーケティングの支援体制も敷いていますので、サポート面も安心いただけます」

最後の質問コーナーでは、各社オリジナルの回答作成に対するチェック体制、質問の多い分野から徐々に範囲を拡大していくというリリース方法、人事部のオペレーション担当者数の一例、広報誌やポスターを使った認知活動の事例などについて、説明が補足された。回答の最後に五十嵐氏は「『HiTTO』の導入が、仕事の効率化やスリム化、創造的で新しいコミュニケーションの活性化、変化への適応力の高い組織づくりの一助になるよう、これからも貢献していきたい」と語り、講演を締めくくった。

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