AIチャットボットと社内FAQの違いとは?
HiTTO株式会社の五十嵐です。働き方改革や業務効率化の推進ツールとして、様々な業界・業種にてAIチャットボットの社内導入が進んでおり、おかげさまで「HiTTO」へのお問い合わせも多数頂戴しております。その中でも特に、人事・労務・総務部門でAIチャットボットの活用を検討されている企業様が増加傾向にあります。
AIチャットボットは、従業員からの問い合わせ対応をはじめ、人事・労務・総務部門が担う業務領域との親和性が高く、人事・労務・総務担当者様はもちろん、全社規模での生産性向上に寄与します。
社内問い合わせへの対応になぜAIチャットボットが有効なのか、社内FAQとはどう違うのか?今回は人事・労務・総務部門にAIチャットボットの導入が進んでいる理由と、その導入効果を、具体的な事例を交えて紹介します。
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社内FAQとチャットボットの違い〜「調べる」から「聞く」へのユーザー体験の変化
従業員の疑問解消・問い合わせ対応ツールとして、人事・労務・総務部門にて導入が進むチャットボット。まずは社内FAQとチャットボットの違いについて、確認していきましょう。
社内FAQとAIチャットボットの違いは、ユーザー体験の違いにあります。
- 社内FAQ:わからないことを「調べる」
- チャットボット:わからないことを「聞く」
調べても目的の回答にたどり着けなかった従業員は、それ以降、FAQページを活用しなくなってしまいます。「自分で調べるよりも、人事の○○さんに聞いたほうが速い」とFAQの存在価値が下がってしまうのです。また、社内周知が行き届かずに、FAQページの存在自体をそもそも知らないという従業員も少なくないはずです。
「聞いた方が早い」と電話が減らない理由
しかしながら、「調べるよりも人事の○○さんに聞いたほうが速い」これは従業員の怠慢とは言い切れません。膨大なFAQリストから目的の答えを探し当てることに、時間がかかるのは事実だからです。
FAQに検索機能を搭載しても、なかなか課題解決には至りません。例えば、人事労務管理に関連する「労使協定」「慶弔見舞金」といった言葉を知らないため検索できない。あるいは「社内交際費」「社内コミュケーション費」といった会社ごとに異なる社内用語の揺れに対応できないといったように、検索そのものが上手く機能しないケースも見られます。
また、「申請」という言葉で検索すると、申請に関するありとあらゆるファイルやドキュメントが、検索結果として表示されてしまい、その中から自分が知りたい情報を見つけられないというケースも発生します。
このように、FAQや従来の検索システムの場合、自分が知りたい情報にたどり着くためには、『どういう単語で検索したらひっかかるだろう?』と質問者が検索するために単語を考える必要があり、質問者のスキルに依存してしまうのが実情です。
AIチャットボットは「聞く」と同じ感覚で利用できる
わざわざ検索するための単語を考える必要がなく、人に「聞く」と同じ感覚で利用できるAIチャットボットは、 “検索しているのに、ほしい申請書が探し出せない“ “大量の検索結果が表示されて、どれが自分の知りたい情報なのか見つけられない”というような、情報検索における課題を解決できます。
人事・労務・総務系社内マニュアルをAIチャットボットに集約
膨大なデータとなる社内マニュアルですが、AIチャットボットがあれば従業員が「調べる」必要はなくなります。
先述した通り、AIチャットボットはFAQのようなデータを集約したシステムとは異なり、従業員が聞く・話しかける新たな存在になるため、人事・労務・総務部門では一緒に働く「仲間」と位置づけることができます。
AIチャットボットの導入によって従業員のユーザー体験は、「調べる」から「聞く」に変化し、「人事の○○さんに聞いてみよう」の対象を、そのままAIチャットボットに移行できます。
AIチャットボットがマニュアルの該当ページのリンクや、これまで活用されていなかったFAQページへ誘導することで、従業員の利便性が高まり、既存の社内資産の活用が促進されます。その結果、従業員が「調べる」手間も軽減され自己解決できる割合が増え、問い合わせ数が削減でき、会社全体における生産性向上を期待できるのです。
言葉の揺らぎにも対応するAIチャットボットならではのスムーズな受け答え
また、AIチャットボットであれば言葉の揺らぎにも対応ができます。従業員から寄せられる質問内容に対応しながら学習とメンテナンスを行うことにより、「社内交際費」「社内コミュケーション費」は同義であると認識し、回答精度が向上します。これは、AI搭載のチャットボットならではのメリットとなります。
もちろん、初期構築のタイミングにて、「社内交際費」=「社内コミュケーション費」である前提にて、AIに学習させるデータを作成することも可能です。「HiTTO」は社内利用に特化したAIチャットボットとして、豊富な導入実績を有します。これまでに蓄積したノウハウや、会社ごとに異なる「よくある質問」をヒアリングし、あらかじめ想定される従業員の疑問や期待に応えられるよう、万全の導入・運用体制をサポートいたします。
人事・労務・総務部門に寄せられる社内からの問い合わせ
各種労務手続きや来客対応、備品管理、そして人材採用にまつわる業務など、人事・労務・総務部門での業務内容は多岐にわたり、間接部門としての細かい仕事が多く、書類不備が許されない事務作業も担当するため、他部署にはない独特の緊張感が漂います。
そんな業務の中で、多くの時間工数が割かれるのが、従業員から寄せられる問い合わせへの対応です。
■従業員から寄せられる「よくある質問」
- 健康保険証を紛失してしまった
- 会議室を予約したい
- 出張の申請方法がわからない
- 社宅の手続き方法を知りたい
このような「よくある質問」は人事・労務・総務部門に頻繁に寄せられます。中には、「電話の取り方を教えてほしい」「プリンターの用紙はどこにあるの?」といった、隣のデスクのメンバーや、部署内の同僚に聞けば解決する問い合わせも含まれます。これは従業員から頼りにされているという見方もできますが、問い合わせを受ける度に業務が中断されてしまうので、自身の作業もはかどりません。
また、従業員からの問い合わせは類似した内容が多く、人事・労務・総務部門の担当者は、同じ質問に何度も対応することとなります。そこで導入されるのが、社内ノウハウを蓄積したFAQページですが、先述の通り、社内FAQにはさまざまな課題が考えられます。
FAQページを取り入れるも…
- 健康保険証の再発行の手続き方法
- 会議室の予約方法
- 出張の申請方法
- 社宅の手続き方法
こうした業務フローや社内規定を一か所にまとめたFAQページは、多くの企業が導入しています。
しかし、実際には、想定通りの効果が発揮されないケースが多々見られます。
膨大なFAQリストの煩雑化
FAQページにまとめられる業務フローや社内規定は多岐にわたります。会議室利用やプリンター設定、さらにはゴミの出し方までと職場生活にまつわること。賃金や育児休暇制度など就業規則。勤怠や通勤経路変更、健康診断などの労務関連。これらは挙げていくとキリがありません。さらに、部署毎や契約形態、勤務形態によって細かな相違点があることも少なくありません。
結果、FAQリストは膨大化し、「FAQを見てもどこに書いてあるのかわからない」といった事態が起こります。従業員は調べることをあきらめてしまい、人事・労務・総務部へ直接、問い合わせを行う。せっかくFAQページを用意しても、これまでと同じことが繰り返されてしまうのです。
人事・労務・総務部門のAIチャットボット活用事例
FAQの課題を解決し、会社全体における生産性向上を推進させるAIチャットボットの導入は、さまざまな業務の自動化・効率化につながります。
「仲間」であるAIチャットボットには、どのような適用業務が与えられ、活躍できるのか。その一例を見ていきましょう。
確定拠出年金に関する問い合わせ対応
「確定拠出年金関連業務」は複雑かつ多数の確認事項があり、人事・労務・総務部門のリソースを圧迫する一因にもなります。
- 会社で徴収して会社が振り込みを代行するパターン
- 完全に個人で行うパターン
会社で代行を請け負っているかどうかの確認や、代行を行っている前提で従業員から問い合わせが寄せられる一方、代行を行わない会社も少なくないため、問い合わせの枝分かれが多い項目といえるのが確定拠出年金です。
こうした分岐を伴う、コミュニケーションが発生する問い合わせへの対応は、AIチャットボットの得意分野のひとつです。あらかじめシナリオ(選択肢)を設定することで、適切な回答に誘導することが可能です。
会食・お祝い花など取引先関連の事務作業
人事・労務・総務業務において意外と工数がかかるものに、取引先などの顧客対応に間接する事務作業があります。例えば、取引先を交えた会食・接待にまつわる問い合わせへの対応です。
- 会食の場を設けるにはどうすればいいのか?
- どのような手続きをいつまでに完了させなければいけないのか?
- 人数に応じた金額の上限は決まっているか?
- 参加人数分の名刺など提出が求められるものはあるか?
- お店を確定してからでないと申請できないのか?
会食ひとつとっても、さまざまな質問が寄せられ、個別に回答していては多くの時間が割かれてしまいます。
また、会食に関連する質問を誰にしたらいいのか?そもそもの問い合わせ先を把握できていない従業員も存在します。何を、誰に、いつまでに聞けばいいのか。こうした従業員が抱える悩みは、速やかに解消する必要があります。AIチャットボットの導入は、見えないムダな時間の削減にもつながります。
出産・結婚などライフスタイルの変化
出産や結婚などの際にも申請が必要になります。こうしたライフスタイルの大きな変化は頻繁に起こるものではないため、従業員や周囲のメンバーが申請内容を把握していない、または忘れてしまうことから、人事・労務・総務部門にさまざまな問い合わせが寄せられます。
- 氏名変更届について知りたい
- 健康保険や雇用保険はどうなる?
- 結婚祝金制度の有無と申請方法は?
- 特別休暇はありますか?
これらは社内規定に準じて概ね、同一の回答となるケースが多いでしょう。社内規定やノウハウの個別周知は、AIチャットボットに適した業務領域で、業務自動化・生産性の向上に大きく寄与します。
一方、AIチャットボットによる受け答えでは、人間味が欠けた冷たい印象を与えてしまうかもしれません。結婚・出産などお祝い事にまつわる回答には、「おめでとう!」とお祝いの気持ちを込めた会話文を一文、追加すると良いでしょう。AIチャットボットとのコミュニケーションを従業員に楽しんでもらえるよう工夫することにより、全社での幅広い利用を促すことができます。
忌引きの申請への対応
従業員のご親族に不幸があった場合にも、さまざまな手続きが必要になります。
- 特別休暇の申請
- 弔慰金の申請
- 扶養家族の変更申請
- 供花、弔電の手配
忌引きにまつわる報告・申請項目は複数あり、大半の企業で個別に規定が設けられています。
一方で、忌引き関連は何から報告すべきか、どのような申請が必要なのか。上司や同僚に申請方法を聞くこと自体が憚られる極めてパーソナルな内容であり、人事・労務・総務担当者も立ち入り難さを感じる領域でもあります。
こうしたプライバシーに関わる手続きの案内をAIチャットボットが代行することにより、従業員の精神的な負荷を軽減できるかもしれません。特別休暇の取得日数や、慶弔見舞金支給申請書の格納場所の案内、扶養家族届や被扶養者(異動)届の変更案内などの問い合わせを、他人を介することなく行えるようになります。
勤怠、電車遅延、在籍確認…寄せられるさまざまな問い合わせ
ここまでご紹介した内容以外にも、人事・労務・総務部に寄せられる「よくある質問」は、業務のあらゆる場面に意外なほどに多く潜んでいるものです。
- 昼休みに役所や病院に行く場合の申請
- 災害発生時などで、公共交通機関の麻痺が予想される場合の動き方
- 出張時の交通機関・宿泊先の手配と規定
- 金融機関等からの在籍確認の電話対応フロー
- 個人的荷物の会社への郵送可否
- 取引先企業チェックと与信申請
- 会議室の予約方法
- 名刺が無くなりそうな場合の対応
- 交通事故や暴力行為等にあった場合
- アプリケーションのインストールの可否
このようにAIチャットボットが対応できる問い合わせ内容は、数多く会社の中に存在しています。その中には、社内規定が存在しない内容もあるはずです。誰に聞いたらよいのか従業員は判断に迷い、疑問を抱えながらも解決を後回しにしてしまっているケースもあるでしょう。日々の疑問の蓄積は、全社規模で考えると多大な無駄になりかねません。
AIチャットボットを導入することで問い合わせ対応を自動化し、会社全体の生産性が向上するだけでなく、日々、AIチャットボットという1人の同僚が届けてくれる「従業員の声」に目を向けることで、従業員の潜在的な悩みや会社全体の課題に気づくこともできるのです。
全社員に関わる人事・労務・総務部門が主導となってAIチャットボットを活用し生産性向上を実現することは、非常に大きな意義をもつでしょう。
人事・労務・総務部へのチャットボット導入におけるKPI設定
AIチャットボットの顕著な導入効果といえる「全社での生産性向上」。AIチャットボットの社内導入は全社的に大きな意義を持つプロジェクトとなり得ますが、その導入効果はどのように計測すればよいのでしょうか? KPIをどこに設定するべきか、導入の前に考えてみましょう。
チャットボット導入の失敗は「使ってもらえない」こと
AIチャットボットの導入効果を測定するにあたり、そもそも従業員にチャットボットを使ってもらえなければ始まりません。この「使ってもらえない」は、AIチャットボット導入の失敗例でもっとも多く見られるケースです。
KPIの設定において、まずはチャットボットの利用率・定着率に着目してください。
【チャットボットを使ってもらえない理由 1】
回答精度が低く「AIチャットボットは使えない」と思われてしまう
【対処】
- 正確な回答を確実に行うべく、回答範囲を限定する
- 回答精度が充分に上がらないうちにはリリースを行わない
- 常に最新の回答を行えるよう定期的なメンテナンスを行う
【チャットボットを使ってもらえない理由 2】
チャットボットの存在自体が知られていない
【対処】
- 社内報や社内掲示などを活用した社内プロモーションを行う
- チャットボットにキャラクター性を持たせる、擬人化するなど、キャッチーな存在としてアピールする
AIチャットボットは万能なツールではなく、あらゆる問い合わせに対して適切な回答を返せるものではありません。「AI=万能」といったイメージのもとに、想定する質問や回答の数を増やし過ぎてしまった結果、回答精度をなかなか上げることができないというケースも見られます。AIチャットボットはすべての問い合わせに回答できるものではないと割り切ったうえで、どの業務範囲において自動応答ができればよいのか、明確に定めましょう。
また、AIチャットボットを初めて利用した時の印象が悪いと、その後の利用率低下につながります。リリース時から一定の回答精度を担保する、誤った回答が見られる際はすぐに改修するなどメンテナンスを怠らず、チャットボット利用率・定着率のKPIを達成し続けることが大切です。
AIチャットボット導入前に知っておきたい失敗パターンと対策について、下記記事も合わせてご確認ください。
活用シーンを広義に捉えた投資対効果の見える化~定性的な効果に目を向ける
利用率・定着率のほか、人事・労務・総務部への問い合わせ数の減少もKPIに当然含まれると思いますが、AIチャットボットの活用シーンは「問い合わせ数の削減」といった限定的な定量数値にはとどまりません。目には見えづらい定性的な導入効果にも目を向けることが大切です。
問い合わせを受ける側目線のAIチャットボット導入の定性効果
- 問い合わせ対応の回答品質の均一化
- 社員の本当に困っている、リアルな声を見える化
- 部署・従業員ごとに個別管理していた社内ナレッジの体系化
- これまで使われていなかったマニュアルやドキュメントの利用促進
- 業務の属人性を排することによる人材流動性への対策
問い合わせをする側目線のAIチャットボット導入の定性効果
- 聞きたくても聞きづらいを解消、チャットボットなら気軽に質問できる
- 24時間365日いつでも質問ができ、すぐに回答が返ってくるので業務遅延がなくなる
- 問い合わせ先がわからず、回答がたらい回しになることがなくなる
- FAQやマニュアルを探す時間を削減
AIチャットボットの導入効果は、定量効果だけではなく、このような目に見えにくい、定性効果にも目を向けることが大切です。
また、「問い合わせを受ける側」の効果だけではなく、「問い合わせをする側」にも様々な導入効果があります。双方の効果に目を向け、導入後の効果測定を行ってみてください。
最後に
人事・労務・総務部門に寄せられる問い合わせは後を絶たず、その対応に追われ、自身の作業の手が止まってしまうことは頻繁に起こり得るものですFAQページの導入もひとつの対策となりますが、対象項目の増加や会社の規模の拡大によるリストの煩雑化は、避けて通れない課題となります。また、問い合わせをする従業員自身も、疑問が解消されずにストレスを抱えることにより、業務におけるムダな時間が膨大に発生してしまいます。
人事・労務・総務部門が担う問い合わせ対応は、AIチャットボットと非常に相性が良い業務領域です。人事・労務・総務のご担当者様のみならず、全社に波及する生産性向上効果を目的として、AIチャットボットの導入を検討されてみてはいかがでしょうか?