AIチャットボットを活用して、
テレワークなどの「働き方改革」を推進
"一緒に働く" 新しいユーザー体験が、従業員の自己解決をサポート
パシフィックコンサルタンツ株式会社(以下、パシフィックコンサルタンツ)は、戦後復興の日本の国づくりを支えるため、1951 年に創業。生活に欠かせない、道路・鉄道・空港・港湾といった交通基盤インフラから、自然災害に対応する国土基盤整備など、国内外のまちづくりを担う、総合建設コンサルタントのリーディングカンパニーだ。業界特有の課題である長時間労働を企業のリスクと捉え、魅力的な業界・会社を目指して、2010年から限られた時間で成果を出すワークライフバランスに取り組んだ。現在は、企業の成長のためには、柔軟な働き方や多様性を強みにすることが大切だと考え「男性育休100%宣言」などの先進的な取り組みも行っている。そうした取り組みが評価され、2017年には「新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞した。
今回は、経営企画部 情報戦略室 黒木 由利子氏(以下、黒木氏)、総務・労務部 山口 佳織氏(以下、山口氏)、広報室長 油谷 百百子氏(以下、油谷氏)、同 井上 寛子氏(以下、井上氏)に、AIチャットボット「HiTTO」の導入背景とその導入効果について、お話を伺った。
導入背景(企業課題)
テレワークなどの働き方改革にも貢献、
管理画面の操作性の高さを評価し、AIチャットボット「HiTTO」を導入
テレワーク制度などを取り入れ、柔軟な働き方ができる社風がパシフィックコンサルタンツの特長だ。しかしながら、自分の仕事にとことんこだわる職人肌の社員が多く、長時間労働が常態化していたため、生産性の向上と業務効率化のため「働き方改革」が始まった。
「情報戦略室のITヘルプデスクに寄せられる問い合わせは、PCやプリンタ、ソフトウェアのインストール方法など、定型的で同じような質問が多くありました。この日々寄せられる従業員からの問い合わせの件数を削減できないかと思い、AIチャットボットの導入検討を開始しました。」(黒木氏)
さらに、働き方改革を推進する中で、テレワークや時差出勤など新しい制度が増え、従業員がみな異なる時間、異なる場所で働くことに対応するために社内の環境整備の必要性を感じたと黒木氏は話す。
「問い合わせ件数を単純に減らしたいという理由だけでなく、気軽に質問ができすぐに回答が返ってくるというAIチャットボットは、今後の当社が目指す働き方にもマッチしており、従業員にとっても必要なツールになると思いました。」
黒木氏は、複数サービスを検討した中でHiTTOを採用した理由をこう語る。
「HiTTO以外にも2社ほど、デモンストレーション含めて提案を受けました。 “AI=難しい”というイメージを持っていたのですが、HiTTOは管理画面が分かりやすく操作が簡単で、メンテナンスしやすい点が高評価でした。これなら導入した後も自分たちで運用出来ると思い、HiTTOを導入しました。実際に今運用していますが、その印象は変わっておらず、学習データの編集などメンテナンスをスムーズに行うことができています。」
利用者に聞く導入効果
“AIチャットボットには愛着が湧くので、
検索よりもはるかに楽しいし使いたくなる!”
導入当初は、ITヘルプデスク担当「さぽたん」のみを社内に公開していたが、現在では社内制度や申請関連の質問には総務・労務担当「ウサポ」、経費精算の質問には「サポワン」と、パシフィックコンサルタンツには、3つのAIチャットボットが社内に配属されている。
全社でAIチャットボット「HiTTO」の活用促進をしているパシフィックコンサルタンツ。日常的に困ったことがあればユーザーとしてチャットボットを活用しているという油谷氏に、AIチャットボットの導入前と後で感じる変化や導入効果を伺った。
「以前は、聞きたいことがあっても、ものすごく簡単なことだけど度忘れしちゃったことや、前にも聞いたことがあるような内容だったりすると、『この人また同じこと聞いてきた!』などと思われるのも恥ずかしいですし、申し訳ないなと思うので、問い合わせすることに少し躊躇していたのですが、AIチャットボットなら何回同じことを聞いても優しく答えてくれる点が気に入っています。(笑)
また、電話やメールで問い合わせをする時は、いつ回答が返ってくるかわからず、それにより業務が遅延してしまうことがありました。
AIチャットボットが導入されてからは、自分が聞きたい時に質問ができて、瞬間的に回答が返ってくるようになったので、問合せに割く時間が減ったなという印象です。」(油谷氏)
さらに、油谷氏は、キャラクターが答えてくれるAIチャットボットは、ユーザー体験としても“楽しい!”と、電話やメールとの違いを実感しているという。
利用定着に向けて気をつけていること
“みんなに使ってもらわないと意味がない”
女性ならではの視点でキャラクターを制作し、社内向けマーケティングを実践
なぜ、こんなにもパシフィックコンサルタンツの中にAIチャットボットが浸透したのか?
利用定着に向けて工夫されたことやAIチャットボットをより多くの従業員に使ってもらうための取り組みについて、HiTTOの導入・運用担当者である黒木氏と山口氏、そしてオリジナルキャラクターをデザインされた井上氏にお話を伺った。
「『ウサポ』や『さぽたん』も『サポワン』も、キャラクターだから質問がしやすいですし、ウサポの場合は回答する時のウサポの反応が面白いのも、AIチャットボットを使う楽しみになっています。例えば、質問に対してウサポが答えられなかった時に、泣きながら倒れて謝っているウサポを見ると、仕方ないな~、かわいいな~と思って、許してしまいます。(笑)
パシフィックコンサルタンツ様
総務労務AIチャットボット キャラクター
「ウサポ」
“問い合わせする“ や”検索する“とは違う、”キャラクターに聞く“という動作は、ただ質問するよりもはるかに面白いですし、気持ちも明るくなります。話し言葉で聞いて、話し言葉で教えてくれるので、システム特有の冷たさもなく、単なるマニュアルを読むよりも回答内容もすっと入ってきて、理解しやすいんですよね。」(油谷氏)
パシフィックコンサルタンツでは、近年、新入社員に占める女性の割合が約33%と増えており、女性活躍推進法に基づく「えるぼし企業」への認定や、「プラチナくるみん」取得など、女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいる。
「総務・労務部では業務上、従業員に向けて情報を発信することが頻繁にあります。そんな時は、できるだけ注目してもらえるよう、少しパロディーを交えた喚起ポスターを作って、楽しく柔らかく伝える工夫をし、従業員に受け入れてもらいやすくしていました。そのため、AIチャットボットを導入した際も、みんなに親しんでもらえるように、オリジナルキャラクターの“ウサポ”を作りました。」(山口氏)
「ITヘルプデスクでは “さぽたん”という5歳児程度を想定したキャラクターを設定しました。5歳児という年齢にしたのは、答えられない質問があった際にも、仕方ないなとみんなに思ってもらえるかなと。(笑)」(黒木氏)
このようなキャラクターの設定など、ユーザーである社員の目線に立った細かいこだわりがAIチャットボットの利用率向上につながっている。今回同社のオリジナルキャラクターをデザインした井上氏に、キャラクターたちに込めた想いを伺った。
「キャラクターと接してくれた人に、より親しみを感じてもらえるようにと、LINEの人気スタンプなどを参考にしながら、ゆるくて泥臭い感じを目指してデザインし、出来上がったのが“ウサポ”です。
AIチャットボット自体が質問すればどんどん賢くなるということだったので、初めは少しおバカな感じを前面に出して、どんどん成長するようにキャラクターを少しずつ変化させていきたいなと思っていたのですが、今は、この少しおバカっぽいウサポの顔が気に入ってしまったので、このままの顔を残したいなと思っています。(笑)
また、AIチャットボットは業務時間中に使ってもらうものなので、少しでも従業員のみなさんの癒しになればいいなと思い、季節毎にウサポの衣装を変えてみたり、小さな変化を取り入れています。朝から夜まで働いていると、季節感を感じなくなってしまうかなと思い、画面にアクセスした時に目に入るウサポで季節の移り変わりをちらっと感じてくれたら嬉しいなと思います。」(井上氏)
質問することでウサポが賢くなることを伝えるバナー
季節毎に衣替えしているウサポ
運用担当者に聞く導入効果
3つのAIチャットボットを社内に配属し、働きやすい職場作りと業務効率化を実現
気軽に疑問を解決できることで、テレワークなど新しい制度の啓発役としても活躍
AIチャットボット「HiTTO」の導入前は、結婚や転勤、引っ越しなどの各種手続きに必要な申請書の保存場所や提出先をまとめた一覧表を作成し更新。しかし、徐々に申請書の電子化が進む中で、“印刷してここに出してください”では説明できないパターンも増える中で、従業員にもっと分かりやすく案内できる方法はないかと考えていたと話す、山口氏。
また、働き方改革の推進に伴って増えるテレワークや時差出勤などの新しい制度を、従業員がきちんと利用できるように積極的に情報発信をしていかないと、という思いもあった。
「以前から、新しい制度ができた際には、社内ポータルの掲示板に『この度、新しい規程・制度ができました』という案内は掲載していましたが、掲載できるスペースも限られているので、それ以上の具体的な情報を掲示板に掲載することはなかなか難しい状況でした。なので、新しい制度ができたことは知っていても、内容はよく知らないというケースが多かったと思います。
現在は、「全社への周知」は掲示板で、「詳細説明や疑問解決」はAIチャットボット「ウサポ」でと住み分けるようにしています。
例えば、テレワーク勤務要鋼が完成した際も、『テレワークの対象者は誰なのか?』『利用回数の上限は?』『誰に申請するのか?』など、単にこの要鋼を読んでね!だけで終わらせるのではなく、実際に申請する時に従業員が困るだろう、疑問に感じるだろうというポイントを予め回答内容として作成し学習させることで、テレワーク制度の啓発活動役もウサポに担ってもらっています。」(山口氏)
“誰でも、いつでも質問ができて、同じ回答が返ってくる”
働きやすい職場作りにも有効
ウサポが誕生する前は、メールと電話で従業員からの問い合わせに対応していたという。
ただ、問い合わせをする従業員からすると、問い合わせしづらかったのではないか?と山口氏は振り返る。
「総務・労務部の担当領域は幅広いので、誰に聞けばいいのか、正直わからないケースがほとんどだったと思います。特にアルバイトの方や派遣社員の方などは、なかなか聞きづらかったのでは?と思いますね。その点、HiTTOであれば、役職や年齢、雇用形態に関係なく、誰でも気軽に平等に質問ができ、情報を得られる点がいいと思います。」(山口氏)
また、質問する側と質問に答える側の双方の視点として『回答内容の均一化』は、AIチャットボットの大きな導入効果の一つであると黒木氏・山口氏は話す。
電話やメールで問い合わせをした時に、答える人によって、若干回答内容が違うなと感じたことは誰でも一度は、経験があるだろう。
「Aさんは、◯◯◯と言っていたけれど、Bさんは△△△と言っていた。」のように、回答内容の属人化は社内トラブルの原因にもなりかねない。誰がいつ聞いても同じ回答を返してくれるAIチャットボットは、職場での小さなトラブルを防ぎ、精神的なストレスの軽減や働きやすい環境作りにも有効である。
時間を気にせずいつでも問合わせ可能、従業員も便利に。
「弊社は、8時30分~9時30分の間に出勤する出勤時間選択制をとっています。ですが、問合せの対応時間は9時~17時のため、9時前に出勤した従業員は質問したくても質問できない状態でした。また、休日出勤をした際に担当者が休んでいて、急いで確認したいことがあったとしても、対応できないという課題がありました。AIチャットボットの導入により、早朝や深夜などの営業時間外や休日でも気軽に質問でき、一般的で定型的な質問について回答が返ってくるというのは、問い合わせする側としても便利になったのではないかと思っています。」(黒木氏)
黒木氏はITヘルプデスク宛てに従業員から電話で問い合わせがあった際に、「さぽたん」に質問してその回答を見ながら対応しているという。『この先は、さぽたんを見てもらえればわかります。』とさぽたんを案内することで、1件あたりの電話対応時間の削減に繋がり、業務の効率化にも役立てている。
HiTTO株式会社の支援体制について
“私たちにとって、とても心強い存在でした“
他業務で忙しい中でもAIチャットボットを公開できたのはCSのおかげです。
HiTTOの導入にあたり、カスタマーサクセスの導入支援が役に立ったと話す黒木氏。どのようなサポートが効果的だったのかを伺った。
「社内で利用する新しいツールを導入する際、プロジェクトがなかなか予定通りに進行せず、その都度、スケジュールの再設定などをすることが多いのですが、HiTTOはカスタマーサクセスの方が導入開始から公開までのタスクとスケジュールを引いてくれて、遅れそうな場合にはお尻を叩いていただいたので(笑)、遅延することなく、無事にリリースに漕ぎ着けることができ、感謝しています。山口にも自信を持って紹介することができました。」(黒木氏)
「社内プロモーションに関しても弊社の特性に合わせて、やり方を一緒に考えていただきました。弊社の場合は、「さぽたん」「ウサポ」「サポワン」と3人いますので、どのように導線を設計すれば、従業員にストレスなく利用してもらえるか悩んでいた時も、今までの様々な企業様への導入支援の経験を踏まえてアドバイスしていただけたのも助かりました。現在は、社内ポータルにAIチャットボットのメインバナーを1つ設置し、それをクリックすると、それぞれの自己紹介ページが表示され、それぞれ聞きたい内容に応じてどの子に聞くか選べるようにしています。」(山口氏)
今後の展望
自己解決文化のさらなる醸成に向け、
システム導入や社内制度の問合せ対応の基盤へ
「AIチャットボットは基本的に予めQAデータを作成し構築するという流れが一般的ですが、「何気なく気軽に聞ける」というAIチャットボットのメリットを活かして、経費精算システムの入替えのタイミングでは、入替え完了前に「サポワン」を公開しました。
システムの入れ替えに伴って、問い合わせの一次受けの窓口として先行して「サポワン」を公開することで、『こんな事に困っているんだ!確かにこれは想定外だった』など、サポワンへの問合せで内容を充実させる動きへと変わっていきました。」(黒木氏)
今後予定している基幹システムの入れ替えの際も同様に、ナレッジを溜めていく基盤として、AIチャットボットを活用していく予定だと黒木氏は話す。
このようにパシフィックコンサルタンツは、ITヘルプデスク、総務・労務、経費精算分野でのAIチャットボットの活用を経て、“気軽に誰でも、いつでも質問ができる環境作り”を実現している。そしてそれは同時に『自己解決の文化』を社内に根付かせると同義であり、その先には同社が目指す働き方改革の成功があるはずだ。